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 入り江の坂道から、500メートル先の海辺に古い校舎が見えた。目を凝らすと、海上から突き出た柱の上に、校舎は立っている。

 八代海(不知火〈しらぬい〉海)に面した熊本県津奈木町(つなぎまち)。旧赤崎小学校は、日本唯一の「海の上の学校」だった。

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展望所付近から見える旧赤崎小学校=2025年6月20日、熊本県津奈木町、日吉健吾撮影

【撮影ワンポイント】

梅雨時期の撮影になり、晴れる日をピンポイントで狙って現地入りしました。「海の上に浮かぶ校舎」を撮影するため、潮位情報を確認しました。到着時には干潮の時間帯で、旧小学校のある場所から右隣に写る裸島まで陸続きになっていました。満潮時に小学校の北東側から見ると、校舎が海の上に浮かんでいるように見えます。(日吉健吾)

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 3階建ての鉄筋コンクリート造りは一見、昭和期の典型的な校舎だ。だが、細部は凝っている。屋上には煙突のような突起が、壁には円窓もある。

 「客船をイメージしたんです」と町職員の浜田真大さん(30)が教えてくれた。海原(右方向)へ出航する様子を表現したのだそうだ。

 校舎の向こう側に回ると、隣接する埋め立て地に運動場が広がっていた。近くで見た校舎の支柱は全部で24本。太さは約2.5メートルもあった。

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埋め立て地に造られた旧赤崎小学校の運動場。現在は芝生が敷かれている。奥は校舎=2025年6月27日、熊本県津奈木町、筒井次郎撮影
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旧赤崎小学校の校舎を支える柱=2025年6月20日、熊本県津奈木町、日吉健吾撮影

 海に建てた理由は、集落の地形と関係している。海と傾斜地に挟まれ、学校の敷地となる平地が少なかった。

 創立は1874(明治7)年…

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